僕はイラストレーターですが、絵を措く仕事なので、時々「芸術家」と誤解されます。もちろん、そう言ってくださる方は、僕の仕事を称賛する意味で「芸術」という言葉を使ってくださることが多いので、ありがたいことなのですが、僕自身は芸術とは琴つ意識で絵を描いています。
イラストの仕事には、具体的な目的があります。僕の場合、その目的は歴史の説明だったり、迷路で遊ぶことだったりします。それをどんな印刷物に使うかも想定して措きますし、一般の仕事と同様、他人の意見を取り入れながら完成させるものです。
しかし、芸術作品には、そういった目的はありません。あえて言えば、良い作品を作ることが目的でしょう。それを見てもらうための方法も、実物の展示が中心です。イラストと比べてどちらが優れているというのではなく、作者の立ち位置が等つのです。
僕も30歳ごろまでは画家として作品発表をしていましたので、ある程度は芸術家も経験していますが、芸術家も誤解されやすい人種でしょう。特に、抽象画や現代莫術などの「よく分からない作品」を作る人は、とんでもなく難しいことを考えているかのように見られがちです。
僕の家内は今も画家ですが、措いている絵は抽象画です。具体的な何かを現そうとして措いているわけではありません。家内の場合、色やタッチを変えながら絵の具を何度も重ねて、自分が良い感じだと納得する画面を作るのがテーマです。例えて害えば、雲の複雑な色を楽しむような絵で、難しいことは考えていません。
しかし、それを見る方々は「きっと何かを表現しているはず」と考えがちのようです。しかし、もともと具体的なテーマは現していません。その結果、「何を描いたのか分からない、難しい絵だ」となってしまうことが多く、家内もよく残念がっています。
家内の例に限らず、芸術作品の中には、何を表現したか分からない作品がたくさんあります。よく評翰家が、その作品の意味を解説しますが、必要以上に難しく解釈していることも大変多いと感じます。
もちろん、作者が作品にいろいろな意味を込めることもありますし、作品を見るときに、それを謎解きのように考えながら見るのも芸術の楽しみ方の一つでしょう。
しかし、それができなければ作品を十分に鑑賞できないと思うのは誤解です。分からないものは、分からないまま「おもしろい」 「きれいだ」などと感じれば十分だと思います。また、趣味に合わない作品もあるはずですから、そういうものは「これは好きじゃない」でいいと思います。
芸術作品の展覧会も、気軽に見てほしいと思います。展覧会は黙って見るものだというのも、ちょっと誤解ではないでしょうか。もちろん騒ぐなどの迷惑行為は論外ですが、普通に歓談しながら楽しむ、身近なものになってほしいと思っています。
# by tonton53kai | 2012-07-29 20:32 | ◎ 同期の活躍